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2005.12.26

うなぎとチョコレート

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かといって、食い合わせの話ではありません。

友だちの親戚の下町にあるうなぎ屋さんに行った。とても美味しいお刺身と天ぷらとうな重をいただいた。味噌の話をしたり、三線を鳴らしたり、住んでいる古い家の話をするわたしたちに、うなぎ屋の親方はなんだか興味を持ってくれて、話題はいつしかみんなのしている仕事の話になった。友だちが「フェアトレード」という切り口で私の仕事を説明しようとすると、おじさんは「どうもその言い方は好かん」、と言ってきた。「フェアって何だ?途上国の人たちはあんたたちがいかなければ仕事がなくなるってことを思うと、何処かあんたたちが上の立場にたっている気がする。」「うなぎ屋はフェアじゃないのか?」、と言って聞かない。出たーっ頑固おやじだ、と思った。鉱山開発の代わりに森でコーヒーを育てながら暮らしている友人や、麻を編んでいる友人の話をすると、おじさんは一瞬おとなしくなった様子だったが、最後にやっぱり、「俺はどうしてもそのフェアトレードってのが納得がいかない。どうもうさんくさい。」と言った。

だけど正直、私もそう思う。私たちと、お客さんと、作り手の人たちが出会えてこうしてつながれて、送料がかかっても地球の反対側のモノが届けられるのは、それはぶっちゃけたはなし、南北の経済格差があるからだし、染色に使う花一つとったって、自然から搾取しているわけだ。それに、莫大な石油を使って飛行機で会いにいくのはいつも私たち。エクアドルのみんなは、いつも私たちが来るのを待つだけだ。地産地消が一番いいに決まっているし。だから、「フェアトレードだからこれ、買ってくださーい」、なんてことは言いたくはない。

その点、うなぎ屋さんは「フェア」だなんて言わないし、言わなくたってもっと確かな気がする。路地に面した焼き場の窓と、のれんの下がる引き戸の間口。そこから入ってくるお客さんが、目の前で食べて納得するように、うなぎの命と、火と向き合いながら、たんたんと焼く。おじさんの額にある汗には、多分フェアなんて安っぽい言葉を超えた、おじさん自身の"納得"みたいなものがポトリポトリ入っているに違いない。

あるとき、お店まで来る路地の途中に、人が落ちそうなくらいの大きな穴があいた。そこは私道で、都や国の持ち物ではないから、お役所はほったらかしだった。お年寄りが落ちたら困ると、気が気でなかったおやじさんは、焼き場の仕事の合間に、その穴の前まで出て行っては「困ったもんだ」と腕をくみながら、穴を見張っていた。すると、しばらくして、噂を聞いたのか偶然通りかかったのか、見兼ねたお役所の人が、特別に治してくれたんだという。その話を聞いて、笑いながらもハッとした。フェアだかどうかっていうのは、そうやってただ腕を組んで穴を見張っているくらいに、その場所に居ないと、分からないことなのかもしれない。

悔しがっている私を見て、別の友だちが「うなぎを森に例えるとですね、」だとか、「コーヒーを買っているお客さんの立場からすると、」と様々な説明を試みたが、結局おやじさんは、「フェアトレード」という概念に納得することはなかった。だけど、嬉しかったのは、チョコレートの味を認めてもらったこと。チョコの包みを開けると、おじさんは、また挑戦的になって、別のお客さんからいただいたゴディバの薄い板チョコと、いつも食べているという100円のチョコレート(チョコレート好きなんだって!)を出してきた。そのときあけていたウイスキーが大分強かったこともあるんだけど、ゴディバも、100円も、同じように甘い味しかしなかった。ゴディバは確かに舌触りがなめらかなのは分かるんだけど、カカオの味がしない。サリナスのビターチョコレートは、無骨なカカオの強い味が、きちんと残って身体に入ってきた。おじさんはそのことに驚いて「おい、俺はなんだか今までだまされてたみたいだな。」と言った。

私は、うなぎ屋と同じくらい、チョコレート工場や、カカオやコーヒーのアグロフォレストリーの森や、サイザル麻を編む風景が豊かだということを知っている。森には、おじさんの店の前の路地にあいていた穴を落ちずに通りすぎた人たちと同じように、そこに住んでいる人や動物が居て、息をのむくらい濃い「いま、ここ」の空気が流れている。だからチョコレートが、美味しいはずなんですよーだ!

あ、また、食べに行きます。

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Comments

うーん、頑固おやじと亜美ちゃんの対決見たかったな。
うちの田舎も昔は頑固おやじの宝庫だったよなー。
うちも父方のじいさんが漁師、母方のじいさんが職人で、もう頑固頑固。テコでも動かない感じ。
自分の生き方は自分が知ってるんだという確信があって、その確信にはちゃんと根拠があったんだよ。昔は。
今の田舎の惨状と頑固おやじの減少はつながった事なんだろうな。

Posted by: akira | 2005.12.26 at 02:03 PM

akiraさん、がんこおやじが沢山居るところで育った人は、多分豊かな森の近くにある海で育った魚のように、美味しい性格なんだと思います。たとえ石頭でも、自分の頭で考えてる人はかっこいいと思います。道にあいた穴の話、akiraさんにもツボだったでしょ!?

Posted by: ami | 2005.12.26 at 11:45 PM

昔に比べて頑固おやじが減った、と言うかおじさんたちが自信を失っているのに、おばさんたちは相変わらず元気一杯!
地域作りの活動と言えば、田舎あたりでは昔は男の専売特許みたいなところがあったんだけど、今じゃ女性たちが元気に活動しています。今は女性の方が地に足がついているのかも知れませんね。
かく言うぼくも、自信喪失系おやじの一人なんですが・・・。
道の穴の話し、面白いです。リアリティーが大切なんですね。チョコもウナギも食べてみなけりゃわからない、ですね。

Posted by: akira | 2005.12.28 at 01:23 PM

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Tracked on 2007.08.04 at 01:10 PM

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