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2005.04.12

パン屋の苦悩

 引き続きパン屋の話。

 先日、なんだかうなだれて帰ってきたパン屋を営んでいる私のパートナー。どうしたのかと聞くと、「パンが高いと文句を言われた。この値段ならもっと大きいパンを売れと言うんだ」と言う。もともと、「採算が合う」価格ではなく、「買ってくれる」価格のパン。ほとんど原価で売っているようなパンを、人々は「高い」と言う。

 それほど魅力のないパンかというと、他のパン屋で売っているパンとそう大差はない気がする。

 ただ、彼がパン屋を営んでいるのは、農民が多く住むコミュニティーなのだ。この国の貧富の差は激しい。残念ながらこの国の収入のほとんどは、権力者や課金持ちの懐に入っていくシステムが出来上がってしまっている(世界第二位の汚職国と言われている)。したがって、下層にいる農民たちにとばっちりがいく。彼らは十分な公共・医療サービス、教育などが受けられない。2000年に施行された、ドル化によるインフレ、また自由貿易協定によって、海外から流入してくる安価な農産物によって、彼らの生産物は、売れなくなっていく。それと同時に油、石鹸、洋服など加工品の値段は上昇していく。だから、質なんてどうでもいい。できるだけ安く買えるもので生活していかないと、家計は簡単に破綻してしまうのだ。

 パンの味よりも、いかにおなかを膨らますかが大事。一度、ヘルシーな全粒粉のパンや天然酵母のパンを作ってみたらと提案したことがあったけれど、速攻で却下された。そんなことはどうでもいいのだ。日本で売られている天然酵母や有機栽培の農産物を使ったパンはとてもおいしいと思うし、健康にもいい。でもそんなことがこの国ではどうでもいいことになってしまっているのだ。日本という国は、いくら不景気だと言っても、なんだかんだ言って、余裕があるんだなと思うのと同時に、「そんなこと」が「どうでもいいこと」になってしまうこの国の実情に悲しくなった。だって、おいしくて、体にいいパンじゃなくてもいいなんて、おなかがいっぱいになれさえすればいいなんて。そうして「どうでもいい」ものを食べていくうちに味覚が破壊されていくのだ。パンが売れないことも悲しいけれど、その売れない理由にもっと悲しくなる。

 世の中、なんて不公平なんだ。そしてその害を被っている人々はおそらくその元凶を知らない。フェアトレードなんて、名前をつけなくても、商売って、モノを売ったり、買ったりすることって、フェアであるべきだとつくづく思う。というよりも、なんでアンフェアになっちゃったんだろうと思う。もともと物々交換から始まって、貝とか石の通貨が出てきて、「お金」の概念が確立して…。「頭のいい人」たちが、シンプルだった「経世在民(世の中を治め、人民の苦しみを救うことbyスロービジネススクール校長)」システムを「エコ・NO・ミー(生態系を大事にしない)」システムに変えてしまった。そして自分だけの利益を求め、他国の人間や未来世代のことにも配慮しておらず、その結果、環境破壊と貧富の差が拡大して、現状のような世界ができてしまった。そしてこんなエクアドルの田舎の末端のパン屋にまで影響している。きっとこの世界には、このパン屋と同じような悩みを持っている人たちがたくさんいるんだろう。

 私たちフェアトレードに携わるものたちができることは、やっぱり現状を末端の消費者(特に先進国の)訴えていくことしかないんだろう。フェアトレードを通して、みんなに気付いてほしい。

 しかし多分、気がついても、うちのパートナーのパン屋の業績は上がらないと思うけれど…。

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