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2005.03.04

グッズマイレージ

suihoruSWcのできた元でもある環境NGOナマケモノ倶楽部のメーリングリストでの「何でわざわざ地球の裏側から多くのエネルギーを使ってコーヒーや水筒ホルダーを輸入しているのですか」というご質問にお答えしたメールです。大好きな水筒ホルダーだけに長くなってしまったのですが、転送や、転載のリクエストもいただいたので、ここにも掲載します!今日の水筒の中身は甜茶!雪でも花粉は飛んでるみたいです。

水筒ホルダーをガールスカウトが環境教育に役立てている記事

暮らしのカブヤ編みと染色について

クリキンデの水筒の話(スローメディアワークスのweb)

**さんみなさん、東京のハチドリ藤岡です。水筒ホルダーについて遅くなりました。水筒ホルダーの「グッズマイレージ」を調べたら、2万km×60g=12t・kmでした。(ただし袋型タイプの場合。片掛型は、2万km×100g=20t・km「フードマイレージ」の他に「グッズマイレージ」という概念もあるようです。)

下の質問のおかげで、なんだかSlothmlの顔がみえてきて、面白くなったと思います。原発の運動に関するメールでもそれぞれの場所でそれぞれのハチ鳥が「私にできること」を考えている景色が想像できました。中村さんのメールで署名の大事さを感じました。こんな風にみんなで「反芻」してみることはナマケモノ的で大事だと思います。

**さん wrote:
「これからは、ないもの、を外から持ってくることではなく、そこに、あるもの、を探すことなのではないでしょうか」この考えはとても賛成できます。だったら何でわざわざ地球の裏側から多くのエネルギーを使ってコーヒーや水筒ホルダーを輸入しているのですか。

私は、SlowWaterホルダー(カブヤの水筒ホルダー)の、1)モノ自体、2)それが作られる風景、3)(産地と使われる土地の双方で)生んでいる効果 が好きなので、水筒ホルダーの企画と輸入をしています。なので使い手兼売り手としてお答えします。

日本とエクアドルの双方で「そこにあるものを見つける」のに、わざわざ12t・kmの水筒ホルダーを持ってくることが必要だと思うからです。

実は、ペルーのおばあちゃんが作った伝統の織布を使ったペットボトルホルダーがあの商品のきっかけです。学生のころ、そのホルダーに水筒を入れて学校に行くのが嬉しくて毎日ぶらさげていたのですが、おかげで自動販売機を使うこともなくなり、とても気分よく過ごせました。友だちに「それお洒落だね」と言われる度に、売っていたお婆ちゃんの佇まいを思い出し、彼女がクスコの町で元気でいることを願いました。

日本中の自動販売機の消費電力は、原発1基分。1年間に日本でゴミになるアルミ缶を作るための電力で、だいたい原発もう1基分だそうです。アルミだって何処かの鉱山からやってくる。それと「アンプラグ」できた、ということももちろん気分がよかったですが、砂糖の含有量のすさまじい清涼飲料水を飲むこともなくなり、身体も気持ちがよかったです。単なる水筒ホルダーなのに、そうやって毎日の暮らしや体に長く影響し続けて、ある意味、ペルーのお婆ちゃんに魔法をかけられたような感覚でした。

でも、確かに輸送のエネルギーや汚染を考慮したら、これを持ってくる意味があるとは言い切れない。では、どうしてそれでも作って売っているのか、それはこうです。

まず上で感じたような「気分のよさ」を、私は他の人にも伝えたいと思いました。エネルギーを大量に使う暮らしから少しでもアンプラグした「自由」な感じと、その暮らしを違う位置から見る目を持ったような感覚。「ひとつできたから次もできそう」という希望。そして、ペルーのおばあちゃんのように自分が住んでいるところから離れた人の作ったものや、ものから垣間見える暮らしを愛しいと思える気持ち。その全部が混じった「身体の感覚」を伝えるために、水筒ホルダーを作ってもらいました。

持ってる人は御存知のように「水筒を持ち運ぶ」機能だけでなく、ホルダーそれ自体がある種のお守りというか、シンボルでもあり、実際はどうしようもなく自動販売機のような様々なものに依存している自分のことを確認し、でもなんとかそこから少しでも抜け出る道を探そうとするための、自分への約束みたいなものだと思います。

だから、別に水筒ホルダーじゃなくたっていいんです。水筒ホルダーの販売を通して「水筒ホルダー的なものが、自販機や原発に頼る暮らしに代わる文化の1つとして広まる」ことに寄与できればと思います。確かに、@@さんのおっしゃるとおりカブヤで作らなくてもいいですよね。全国各地の色んな素材でできたら素敵ですね。「駅弁フェア」みたいに「全国水筒ホルダーフェア」を東京駅で開いてみたら楽しそう!(水筒ホルダーを作るのによい国産の素材があれば、是非教えてください。実は、西表島のアダンの繊維を泥染めして、試作品をいくつか作っていただいています。)

でも、地上の資源だけでも世界にいろんな素材がある中から私はカブヤを選びました。どうして国産の繊維でなく、エクアドルのカブヤで作るか、それは以下です。

ナマケモノ倶楽部と縁の深いインタグ地方には、このカブヤ(竜舌蘭)が自生しています。一方でそこでは、政府や多国籍企業によって環境破壊型の鉱山開発が計画されていて、もし住む人たちが開発を受け入れてしまえば、森や川が汚染され、生態系の仕組みが壊されてしまう上に、わずか20年でその土地は廃虚になることが分かっています。それでも、開発のお陰で医療施設が整えられたり、もっと世界のことを知るために教育が整えられると聞けば、土地の人の心は動いてしまうかもしれません。

そんな中で、生態系を持続可能に保ちながら生活の質をあげるために、コーヒーの森林栽培と並んで立ち上がったプロジェクトが、この「カブヤ編み」です。それまで、飴をひとつ買うにも男の人たちに聞いていた女性達が集って生産者組合を組織し、この繊維で民芸品を作りはじめました。同世代の女の子たちが、子供をあやしたり鍋を火にかけたりしながら編んでいるカブヤのグッズは、それが作られる風景ごと、好きになれる商品でした。価格は現地の人に決めてもらいます。例えば3時間程で完成する水筒ホルダー2つで、男性が一日中畑で働いて稼げる額より、少し多い価格です。

仕事の現場が素敵ならば、できあがるモノも当然よいものになります。最初は、2色程度で編み方も簡単なもののみだったのに、日本から発注を重ねるごとにパターンや色数、参加するメンバーも増えて、多様性のある素敵な商品になり、お客さまにも御好評をいただいていますし、日本に着いた箱を開ける際はこの上なくワクワクします。

最初は水筒ホルダーのように、こちらから提案し、パターンから一緒に検討するという形だったのが、最近は「日本人はこういうものを使ったほうがいいのでは?」とエコバッグが女性組合から私たちSlowWaterCafeへ提案されたり、エクアドル国内の市場や店でも少しずつ売れるようになっています。また当初は「男性に対して女でもできることを示すために、女だけの女性組合にした」と聞いてなんとなく「こわっ」と思っていたのですが、最近では、女性が習いに行く際にそのだんなも付いていって横でやっているので、男の人も密かに編めるそうです。男性が彼女たちの仕事に敬意を持っている証拠だと思います。

カブヤの産業としての見直しは、現地の暮らし自体にも影響しています。インタグはテレビなどもまだ普及しきっていない辺境の地域ですが、ナイロンの紐が入ってきています。そして馬の鞍や家畜の紐に使われてきたカブヤが、安く十分に丈夫なナイロンにとってかわろうとしています。カブヤ(竜舌蘭)から繊維を取り出して綯うのには時間がかかりますが、紐はお金を出しさえすればいいわけです。こうして、地上にある資源で何かを作る、という貴重な技術が、継承されずに、途絶えかけています。

そんな中、カブヤ編みの生産者組合が商品を日本に輸出しているのをきっかけに、または、エコツアーで訪れた人々が「素晴らしい手仕事だ!」と誉めるのをきっかけに、その文化がもういちど見直されつつあります。「実は私もできるよ」と名乗り出た誰かがその業を披露したり、年輩の人に習う約束を取り付けたり。現に私はそのような現場に、何度も居合わせました。こうして村の自然や伝統について学びなおしているインタグの若者の態度に、私はとても憧れます。このようにスローな暮らしへ転換する必要性やインスピレーションをエクアドルから受け取ったり、逆に日本人を含む外国人が「地域により根付いた産業に」敬意を表すことで生まれるような影響は、お互いに必要だと思います。フェアトレードという「双方の暮らしや文化を深める」つながり方は、決して単なる通過点ではなく、地域の宝を見直す大事なプロセスだと思います。そしてこの双方に起きていることを伝えながら私はホルダーを販売しています。

住んではいてもそれまでは深く入ることのなかった(インタグの多くの人は入植者です)家の裏の森を歩いて、自分の住む地域の近くでどんな素材が染料に使われるのかを新たに発見する。そのプロセスも、豊かなものだと思います。私はそういう暮らしは送れていないけど、ホルダーの色から、森を歩くような思いを受け取ることができます。染料になる植物というのはそのまま薬であるとはよく聞きますが、色を通して植物の命が映し出されているのだと思います。プレインカの文明では染織の技術も高度に発達しましたが、同じ地域であるインタグの人々も、自然からのインスピレーションで今後古代の人たちのように素晴らしい染めの技術を深めていくと思います。

カブヤの生産者組合の技術の向上にくらべると、私たちはまだその意味を丁寧に伝えたり、販売を広げることは追い付いていません。ただ、例えばパターンを統一できれば販売しやすくても、それはしないようにしています。生産者の感性や、そのときどきで出会える植物の色を大事にしたいからです。どうせエネルギーを使って、輸入、販売をするなら、その生産の景色まで素敵なものを作ろうと、こだわっています。

「どうしてわざわざ地球の裏側から水筒ホルダーを輸入するか」に対する私なりの、これが答えです。別に、世の中により広くSWCの水筒ホルダーを広め、それで覆ってしまおうとしているわけではなく、答えのうちの1つとしてこんな風に1つずつ、「新しいつながり方」を作ってゆくことを選んでいます。

中村隆市さんはコーヒーだけでなく、コーヒーの樹がはっているその根っこの先の大地や、そこに暮らす人々のこととても良く見ていらっしゃいます。それにナマケモノ倶楽部では国際会議のときなどに「コーヒーだけを植え過ぎないで他の生活に必要な作物も一緒に育てて下さい。」ということを生産者に伝えています。これは現地の自給自足の経済が壊されては意味がないという配慮からです。中村さんの場合は、貿易ということを越えたある種の地域づくりみたいな仕事や態度なのではないか、と私は思います。

最後にふと気づいたのですが、私はこのメールを、半導体の入ったPCから送信します。ICチップは製造過程で、シリコンバレーの地下水を大量に汚染していますが、家の父はそのメーカーの1つにつとめています。なので**さんの書いていた雇用の問題を思うとどうしようもなくなることもあります。だからこそ中村さんの言うように、「雇用の壁」の前で立ち止まらず、その先を語っていくことが大事であり、「スロービジネス」というのは本当に重要なアイデアだと思います。インターネットを通して宮内さんや他のみなさんに「振り返ってみるきっかけ」がもらいましたが、パソコンも手放せないし、コーヒーも大好きだし、中東で何が起きていようと石油でできたマスカラをまつげに塗ってしまう。そういう自分だから、私には今後も、「水筒ホルダー」が必要なんだと思います。

以上、大好きな商品だけに長い文になってしまいましたが、最後まで読んでくれた方がいたら(水筒ホルダーをプレゼントしたいくらいです)ありがとうございました。

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Comments

画像のホルダーがお嫁にゆきました!買っていただいた方からのメッセージです。SlowWaterHolderをお使いになっている方も、是非是非感想をお知らせください。
> 見つかりました!私のお気に入り。
> 画像を見た瞬間の印象というか、直感で決めました。
> さらに、妹も欲しいという事で、2種類、注文をお願いします。
> 今から、水筒に何を入れて出掛けようか、考えるだけでウキウキしちゃいます。
> 春ですからね。
> 素敵なものたちに出会わせてくれたことに感謝です。
> ありがとうございます。
> それでは、楽しみに待っています!!

Posted by: slowwater | 2005.03.11 at 08:15 AM

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